はてブでテクノエッジの記事を目にして、気になって触ってみたのが大体2週間前くらい。
それから無料プランで1日に付与されるクレジット分くらいをコンスタントに生成してみてるんだけど、たしかにこれは今まで出てきたAIジェネレートの曲に比べると格段にレベルが高いと思う。ヒップホップで注文をすればラップも入れてくれるし、リリックは当たり障りないけどまあ全然聴けるレベル。正直ビビった。こんなツイートもしたけど、このレベルの曲が口開けて待ってるだけで出てきちゃうと、この生成された曲を「自分の曲」として世に出したりしたらいよいよ趣味で音楽作っている人間としては終わるな、と恐怖したりもするくらいには驚いた。
Suno AI、おもしれーという気持ちとこれで生成した曲を自分の名前で出すようなことはできないという危機感とが両立している
— ときどきDJ (@tokidoki_dj) 2023年12月12日
もちろん、曲の頭が曖昧だったり終わりがぶつ切りだったりという仕事の甘さはあるが、1分ちょっとの曲としては鑑賞に耐えうるレベル*1の音源を出してくる。
ただ、同時に「これって誰のためのサービスなんだ?」という疑問も湧いてきた。僕が生成系で音を作るときというのは目的が完全に一つで、「サンプリングソースを得る」ということに尽きる。自分で弾けない旋律を散々に切り刻んで新しい曲を作る、そのための素材としての音が欲しくてやってる。だが、Suno AIをはじめとした音源生成は基本的に全部盛りの「一つのビート」として音を生成してくる。なので正味「上ネタだけでいいのに」とか「ドラムだけ使えた方がいいな」とかそういう感想を抱く*2。で、じゃあSpliceの方が便利じゃない?と思ってしまう。Spliceはほしいネタをピンポイントで探してくることもできるし、なにより生成系では知らず知らずのうちに人の権利を侵害しかねない現状*3にあるけどSpliceにはそれがない。ビートを作るという人にとっては明らかにSpliceの方が便利だ。
ではビートを作る人以外、他にどういう人がAI生成の曲を必要とするのかがわからなくなってしまった。どこぞの誰とも知らない人のなんとなくそれっぽい1分程度の曲を聞きたがる層って一体どこにいるんだろうか。BGMとしての利用というのも考えられるけど、それなら他にもいくらでも選択肢はあるし、自分で生成する意味もいまいちわからない。テクノロジーの進化を肌で感じつつ、「その実このサービスは誰に必要とされているのだろう」ということがわからなくなってしまった。個人的には音楽に限らず生成AIの技術進歩は人類に貢献することが多いと思っているんだけど、これがこと音楽だから疑問を感じてしまったのか、それともまた別の要因なのか。今の僕にはまだわからないけど、2023年の冬に「AI生成の音楽は誰に求められているのか疑問に思っていた」ということだけ残しておこうと思う*4。
いよいよ逸木裕先生『電気じかけのクジラは歌う』のような時代が来たな
— ときどきDJ (@tokidoki_dj) 2023年12月13日