ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

逸木裕『電気じかけのクジラは歌う』読んだ

2019年刊行なのだが「生成AIによって作曲家が不要になった世界」を描いていて、さすがSF作家だぜと思ってしまった。そして僕も趣味で曲を作る人間なので他人事じゃない。作曲家を辞め、生成AIの学習データアセットを作る「検査員」の仕事をしている主人公が、かつてのバンドメンバーであり天才作曲家「名塚楽」の死と名塚が残した遺作の曲についての謎を巡るお話。面白かったです。ホラー要素がない話を久しぶりに読んだというのと、ミステリはミステリなんだけどひりつき過ぎない感じが絶妙で「最近こういうの読んでなかったな」と思った。あんまり音楽に関する解像度が高いわけではないのでライトSFとして読むのがいい気がする。全体的に人間が生きている感じの描写がなく、そういう表現も近未来を演出しているのかと思う。あと出てきたキャラの中では小宮律が普通にいやな人間で笑った。お話のオチとしてはものすごくカタルシスがあるわけではないけど爽やかでよい着地だったと思う。霜野の最後が気になるところだが、梨紗が幸せになれたならokです。

で、本の感想としてはそれくらいなんだけど、この作者の方結構思い入れがありまして。逸木裕さん、昔ブログ書いてましたよね?結構前になにで見つけたか忘れたんだけど小説家志望の方のブログを定期的に読みに行ってて、「一次選考通りました」とか「二次選考で落ちました」とか報告のエントリもあったりしてほんとうに薄ぼんやり遠くからささやかに応援してた。そしてある日「大賞いただきました」みたいなエントリを見て勝手にこちらも喜んだりして、書籍発売するというエントリを読んでその日に本屋で予約したりしたんですよ。なのでよく覚えてるんだけど、ご本人はブログ消しちゃったみたいで今探しても出てこなかった。『虹を待つ彼女』が自宅にあることが僕にとってはなによりの証拠だと思っているんだけど記憶違いじゃないよな。はてなブログだったと思うんすよ。なので勝手に親近感を持っている*1というか。まあなんかこれが書きたくてこのエントリを書いたようなもんです。オチとかはない。

*1:あと著者プロフィールを見たら思ってもないところでリンクする箇所があったというのもある