『夜の公園』という曲を聴いていた。一切曲中では触れられないが、明らかに「片思いしている女のことについて相談をしてくる男のことが好きだけど言い出せない女」の物語で、あまりに作詞が巧み過ぎて震えてた。赤い公園は『ランドリーで漂白を』*1で初めて知って、こんな硬派なポストロックをやってるガールズバンドがあるんだと驚いた記憶がある。その後、『公園デビュー』はあまり聴いていなくて、『猛烈リトミック』でめちゃくちゃハマった。たしかAmazon Music Unlimitedで聴いたんだと思う。当時こんなエントリも書いてる。
AmazonPrimeミュージックで聴きたい曲が思いつかなかったから適当にスクロールしてタップしたらたまたま赤い公園で、もとから好きだった『108』聴いて、『tokyo harbor』聴いて、で『楽しい』聴いたときに「あー楽しいことしよう」と。単純なもんだ。
めちゃくちゃその通りのこと書いてた。たしかに当時はAmazonPrimeミュージックって名前だった気がする。それはいいとして、当時そんなこんなで聴きつつ、新譜はあまり追ってなくて、思えばちょうどその年にボーカルの佐藤千明氏が脱退したんだった。そういうこともあり、なんだかあまりノリノリで聴く気になれなくてずっと『猛烈リトミック』を思い出したように聴き返したりしてた。
その後、翌年に石野理子氏が加入したと聞き、あー解散しなくてよかったと思ったことを覚えてる。しかしここでもシングル曲だけちらっと聴いて「アルバムはまあいいか」とか考えていた。
2019年になって、メイン使いする音楽ストリーミングをAmazonからSpotifyに切り替えた*2。ここで赤い公園を久しぶりに聴き返し、当時リリースされていたアルバムまで聴くようになった。当時『消えない - EP』が出たとかで聴いて『Highway Cabriolet』と『Yo-Ho』にめちゃくちゃ衝撃を受けた。もともとものすごいポップセンスだなと思っていたが、言葉遊びから作編曲までこんな器用なことができるなんて津野米咲は本物の天才だ、と各方面に喋った気がする。
それから1年経って2020年、『THE PARK』がリリースされたときは「あとで聴けばいいや」と思っていた。正直。ストリーミングだとそういうことが増えた気がする。音楽が溢れていたので、聴きたくなったときに聴けばいいと思っていた。コロナでライブどころじゃないけど、いずれどこかのフェスかなにかで観られるだろうと思っていた。
そうしたら10月に津野米咲は旅に出てしまった。
今思い返しても、本当に食らってしまった。自分より年下の天才がいなくなってしまったことに対する喪失感があまりに大きかった。そしてしばらく『猛烈リトミック』すら聴けない状態になりそうだなと思っていた矢先、11月に『オレンジ / pray』がリリースされた。
それからしばらくはこのシングルしか聴いていなかった。天才が残した最後の作品を刷り込むように聴き返していた。晴れて空が青い日には今も聴き返している。そして泣いてしまう。特に酒が入っていると自室で声をあげて泣いてしまう。
冒頭の『夜の公園』に話を戻すが、これはたしかに佐藤千明ではなく石野理子に歌わせる曲だなと思った*3。石野理子が歌うから最後に「私じゃ駄目ですか」という歌詞を書いたんだと思う。 こんな曲を聴いてこなかったなんて、なんともったいない時間を過ごしていたんだろうと。あまりにハードロック、グラムロックなイントロからここまでキャッチーでポップな曲に仕上げられる人間が何人いるんだろう*4。シンプルだけど確実にロックなギターのリフ。一人の天才が生きていたことを忘れないと思う。
このエントリは衝動的に書き始めて、2022年6月27日に書き終えた。よってこれは予約投稿で本日公開される。
津野米咲を偲んで。