ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

根本聡一郎『プロパガンダゲーム』読んだ

最近あんまりkindleを使えてなかった*1んだけど、もう無理~ってなって一人で入ったチェーンの居酒屋で「そう言えばなに読み途中だったっけ」となり開いたらこの本をレンタルしていたところだった*2。そのまま数ページ飲み屋で読んで、帰ってから寝る前までパラパラ読むというのを数日続けて読み切った。ゲームデザインの本を読むのは勉強の時間であるが、小説を読む時間は「エンタメを享受するご褒美時間」であるため時間の流れ方が全然違う。

こちらの小説のあらすじは、某有名広告代理店の最終入社試験に集められた大学生たち8名が「戦争をさせたい政府チーム」と「戦争をさせたくないレジスタンスチーム」に4名ずつ分かれてロールプレイをし、専用SNSで世論をどちらに傾かせられるかの情報戦を行うというもの。そして各チームにはそれぞれ1名ずつ「相手のスパイ」が紛れていて、協力して勝利を手にするための戦略立案/実行と、誰がスパイなのかをうっすら勘ぐりあうことが必要というゲーム。めっちゃおもしろそうじゃないですか?

内容もちゃんとおもしろくて、いわゆる陰謀論的なプロパガンダ*3ではなく、真っ向から「政府チーム」「レジスタンスチーム」としての主張を放送してプロパガンダをし合う話。ちゃんと情に訴えるパターンや、歴史を掘り返すパターン、敵国による具体的な被害を匂わせるような臨場感のある動画を公開するパターンなど、「あり得るプロパガンダ*4で戦いあう。初手で出てくる広告代理店局長がいかにも巨悪サイドでございます、という描かれ方をして笑ってしまった。いざプロパガンダゲームが始まってからはスピーディにことが進むし、情報を出す順番で形成が逆転していく様や、お硬い側が急に親近感を持たせるための施策を打ってくる様はエンタメ性がありつつリアルで「面白さ」と「現実的な嫌さ」が両方あってよかった。あとはキャラ付けもなかなかわかりやすくて、綺麗事だけじゃない政治を知っているからこそあのスタンスをとる男、あくまで自身の正義感に絶対の自身を持っているからこそオチではあちらについた女性、入社試験に合格したがそれぞれ違う進路を考えた2人、各キャラの行動原理がストレートに受け止められてよい。ネット上の感想でも「ラストもうちょっと膨らませられたのでは?」とか「オチが微妙」という意見も見かけたが概ね同意です。僕も「めちゃくちゃにハマったオチ」とは感じなかった。ただ、話は面白いです、というのは断言できる。なんでしょうね、実は公安とかCIAとかだったりしたら僕にはハマったかもしれない。そして最後は大人の声に転がされて彼らもまた結果的にプロパガンダの一部として使われてしまうのでは、とかそういうオチとか。

いろいろ書いたけどいい本でした。2022年に舞台化もしてるらしくてそれも気になる。Blu-rayもあるらしいが、予約分だけで一般流通してないっぽいのが残念。いつかヤフオクとかメルカリで見つけたら買いたい気持ちがあるので根気よく探していこうと思います。

www.mmj-pro.co.jp

*1:単純にクソ忙しくて開いている暇がないだけ

*2:kindle unlimitedは読み放題であるが「レンタルしている」という体であるため

*3:〇〇は実は政府のプロパガンダで~、みたいなやつ

*4:なんなら今も世界中で行われている、悲しいことではあるが