ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

最近読んだ本20230201

愚直にyyyymmddまで入れることにした。引き続きkindle unlimitedで読んでる。

福澤徹三『そのひと皿にめぐりあうとき』

戦後と現代の日本を並行してなぞっていくストーリー。コロナ関連の心理を丁寧に描いているからこそ時代を重ねるごとに資料的価値が出てきそう。戦後の描写は最初かなりハードで、「頼むからもうやめてやってよ」と心が痛んだ。ただ、本当にこういう人生*1を送った人がいるんだろうなと思うと反戦の気持ちも芽生える。尻上がり的に幸せになっていくのが唯一の救いだった。現代の方は逆で、ぬっるいけどもリアルな人生がだんだんと歯車のずれによって落ち込んでいく様が辛かった。自分の学生時代に照らし合わせるほどではなかったけど「ありそう」というストーリー。コロナ禍での父親のリストラ、成就した恋が散る様、学内での疎外感、全部ありうる。一度底まで転げ落ちて、ちゃんと自分起因で上に向かって行って本当によかった。そして、この戦後と現代がどう交わるの?とずっと考えていたんだけど、最後完璧に伏線回収してて素晴らしかった。脳汁出るとはこのこと。「行定勲監督で映画化してくれ~!」ってなった。けど多分3時間くらい必要になりそうなので難しいだろうな。小説で読みましょう、人間讃歌です。

五十嵐律人『法廷遊戯』

ロースクールに通う大学院生久我清義と周辺人物の物語。罪とは、罰とは、裁きとはなにかを考え直したくなる。なにを書いてもネタバレになりかねないのでかなり抽象的なことを書くが、兎にも角にも「救い」がない。どことなく常に冷たい印象で、陰鬱で、透き通っているのに靄がかかっているような。5分に1回くらいのペースでやるせねえなと感想を抱いていた。動機からトリック、その公開手順まであまりにちゃんと組み立てられていて作者の実力が伺い知れる。僕は馨のことを全然理解できていなかった。あとは前半のテンポは重く暗いんだけど、後半に向かうにつれてどんどんテンポが上がっていく感じ*2も素晴らしかった。作者は執筆時現役司法修習生だったそうで、法関連知識はもちろん模擬法廷の描写もディティールが細かい。よい小説でした。

似鳥鶏叙述トリック短編集』

amazonでのレビューで結構「これって叙述トリックか?」みたいなこと言われてるけど概ね同意。特に『ちゃんと流す神様』。ただ、それはそれとして読み物としてはおもしろいと思ったし、『背中合わせの恋人』はかなり好きだった*3。『閉じられた三人と二人』が一番叙述トリックとしてストレートなんじゃないですかね。あと読者への挑戦状として出されていた「すべての話に通しで出てるやつ」は読み切れたし、別紙さんも読み切れました。気軽に読めるので「叙述トリックがどうとかではなく、なんとなく読むのにいい短編集」くらいに思っておいた方が楽しめると思う。

*1:近しいエピソードを参考にはしてると思うので

*2:暗さは常にある

*3:これまたamazonレビューで同じこと言っている人がいて笑った