ときどきDJ

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宇津木健太郎『森が呼ぶ』読んだ

最恐小説大賞の第二回大賞受賞作。いいすね、最恐小説大賞。『ヴンダーカンマー』もそうだったけどクオリティが高い。この小説のよいところは構成が巧みで、筆者は「友人」から受け取った日記/手紙を小説の体としてこの最恐小説大賞へ応募してきた、という設定になっている。そのため基本は「友人」である「私」の視点で進んで行くのだが、「私」の大学の同期である阿字蓮華の実家地域で信仰されている奉森教*1に関連して最悪な話が展開していく。既読の方にはネタバレになってしまい申し訳ないが、貴志祐介『天使の囀り』に近いものを感じた。これを見てわかる方はわかるが、虫が関係してくるので虫描写が苦手な方は要注意。

話は結構突飛な展開を迎えるようにも思えるんだけど読み返してみると細かな伏線が仕込まれていたり、残虐描写も肉体的な残虐性と精神的な残虐性が両方ともあってかなり練られた話だなと感じる。特に阿字蓮華が水田に突っ込んだあたりの流れが本当に最悪ですごかった*2。日記というか手記のはずなのに他の存在の意思が介在してくる文章構成とかもよかったし、それを引きずって最後の一文まで期待通りでパニックホラーというエンターテインメントを作者は深く理解していらっしゃる。kindle unlimitedで読めるが、最恐小説大賞はエブリスタも共同主催なのでwebで読めるので先日書いた『ヴンダーカンマー』も併せてぜひ。

estar.jp

*1:一応その地域全体の話ではあるんだけど

*2:後の話の展開的に「わざわざその方法じゃなくても入り込めたやんけ」ってなった