ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

判断の仰ぎ方

仕事をしていると判断を仰がれることが多いのだが、8~9割の確率で「判断するための情報が足りない」状況になる。そのためひとつずつ判断するための質問をするんだけど、その時間があまりに不毛で萎えてしまう。もちろん初報段階ですべての情報が出揃っているとは限らないので、完璧に情報を揃えてから判断を仰げと言いたいわけではない。その場合は「わかってないことがある」という情報がほしい。で、この「判断するための情報が足りない」状況ってのは「判断したことがないから判断するために必要な情報がなんなのかわからない」から起きるんだなと最近気がついた。

この「判断するための情報」というのは普通に社会に出れば初手で叩き込まれることだと思っていたんだけど、どうにもそうではないらしい。僕は新卒でITベンチャーに飛び込んで社長と隣合わせで仕事をしていたから、常に社長から「質問なのか相談なのか整理して、自分だったらどう考えるかまでセットで持ってこい」と毎日ボコボコにされて育った*1。そのため「自分だったらどう考えるか=なにを基準に判断をするのか」を前提に情報を整理する癖がついたため、取引先などとのやりとりで「そういうことが聞きたいんじゃない」と言われることは少ない*2

世間一般では「緊急度」と「重要度」のマトリクスとか言われるけど、僕は「緊急度」と「影響度」で表現することが多い。というのも、重要かどうかというのは個人の主観によって左右されることが多くて事実と照らし合わせたときに不整合が起きがちだからだ。どのような影響があるかは個人の主観よりも「事実に対する影響」で捉えやすく、現実から乖離が少ない。そのため僕は「緊急度」と「影響度」のマトリクスで判断をしている。

例えばECサイトで商品Aの商品画像一覧に表示されるサムネイル画像が正しくないアスペクト比で表示されるという不具合があったとしよう。これは間違いなく修正されなくてはならないバグだが、緊急度/影響度で考えると以下のようになる。

例 ※誤)商品一覧画像 -> 正)商品画像一覧

  • 商品Aの商品画像一覧に表示されるサムネイル画像のアス比がおかしい
    • 商品画像一覧以外の画像、特にトップに表示される商品画像は正しいか?
      • 問題が商品画像一覧だけなら影響は少ないため
        • 影響が少ないなら緊急度も高くない
      • 商品画像自体がおかしい場合は売上に影響する可能性が高いので影響は大きいため
        • 影響が大きい場合は緊急度も上げる
    • 検索画面など他画面でのサムネイル画像は正しいか?
      • 検索画面でのサムネイルが正しい場合は商品詳細までの導線に影響は少ないため
        • 影響が少ないなら緊急度も高くない
      • 検索画面でサムネイルがおかしい場合、商品詳細に行く前に離脱する可能性があるので影響が大きいため
        • 影響が大きい場合は緊急度も上げる
    • 修正にかかるコストはどれほどか
      • 小規模なら即断できるが規模が大きくなるなら他タスクと天秤にかけて判断するため
    • 修正することで影響される作業や箇所はどれくらいあるか
      • 局所的な修正で影響も少ないなら即断できるため
        • しかし緊急度は高くないため「手を付けられるタイミングで直してください」となる
      • 根本部分に修正が必要で他画面などに影響があるならリスクを検討した上で修正実施時期を判断するため
        • 影響は大きいけど緊急度は低いので慎重にタイミングを図るという判断になる
    • その他判断を仰がれる理由になった懸念などがないか

といったことが考えられる。まあこれは例えなので非常にシンプルなケースだけど。上記のとおり僕は判断する上で「どれだけ緊急性があるか」「影響範囲はどのくらいか」で判断するため、聞きたい点としてはbold箇所になる。逆に言えばその点が抑えられた判断の仰ぎ方をしてくれればその場で「やる/やらないを即断」or「すぐには判断できないが情報は足りている」旨を返すことはできる。で、毎回こういった視点での情報が揃っている必要はないけど、毎回この視点で質問するのは結構疲れる。というか聞かれるのわかってんのになんで先にそれまとめてないの?となる*3。まあオチとしては「聞かれるのわかってない」人が非常に多い、というだけなんだけど。

あと地味にきついのが最後の「その他判断を仰がれる理由になった懸念などがないか」。例えば「商品Bの画像に誤りがあったので正しい画像にアップし直していいですか?」と判断を仰がれた際に「当然やるべきだけどなにか懸念があるから判断を仰ぐのか?」という思考になってしまう。「商品Bの画像に誤りがあったので正しい画像にアップし直しておきます、他の箇所に影響はありません」と言われれば「ok」と返すだけで済むのに。

仕事はコミュニケーションだと僕も思うけど、世の中には無用なコミュニケーションが多すぎる。

*1:たぶん当時のどこのスタートアップもベンチャーもそんな感じだったと思う

*2:僕も人間なのでまったくないわけではない

*3:あまりに緊急度が高いので先に事象の報告だけ来るケースとかは除く