先日買いたいものがあって外出していて、普段あまり行かない街まで片道1時間かけて歩いていた。これは単純にその街に行けば買いたいものが一気に買えるからという理由*1だったのだが、やはり普段行かない街に行くと想像していない出会いがあったりして面白い。
到着してそうそうに買い物を済ませ、せっかくだから喫茶店にでも入ってコーヒーくらい飲んでいくかなと喫煙所でgoogle mapを眺めていたら、喫煙所横に露店が連なっていることに気がついた。なにやらハンドメイドの出店の催しをやっているらしく、アクセサリーとかインテリアみたいなものがたくさん並んでいた。こういう突発的な出会い好きなんだよなーと眺めていたら皿を焼いている工房が出店していた。
僕は学生時代に美術をちょっとかじっていて*2、日本美術では焼き物の授業を取っていた。正直知識的なものはほとんどなく、今でも有名な焼き物などには明るくない。ただ漠然と焼き物は好きで、焼き物の授業では美術館に行って「自分が見た焼き物のディスクリプションと感想を述べよ」という非常にゆるい試験があった。まあ怠惰な学生としてはほとんどの人が当たり障りのないキャプションから引っ張ってきたような感想を書いて単位を取るというのが一般的だった。僕はというと、どうにも納得がいかなかった*3ため「作品に対する美術的な感想というものは持ち合わせていないが、焼き物における『侘び寂び』の概念は対象物の破損等における諸行無常感というよりも『どこかの誰かが生活をし時を過ごした爪痕』にこそ郷愁の念を抱くのではなかろうか」というアツいポエムを書いて最高点を獲得した。極めて痛い大学生であった*4。
そんなバックグラウンドがあるので、皿を見かけて「きれいな釉薬だな」と思い、思わず店主に1枚おいくらですか?と訪ねた。大体3000~4000円くらいで、釉薬の色によって1枚1枚値段が違う、とのことだった。独身中年男性はわりと金を持っているので、その場で2枚ほど購入させてもらった。焼き物なのでレンジでは使えないし、食洗機も不可(持ってないけど)。そんな使い勝手が悪いものを、無印やニトリの3~4倍*5の値段を出して「きれいな色だから」という理由だけで即購入したのである。店主から「焼き物お好きなんですか?」と聞かれ、「知識はないですけど好きなんですよね」と会話をした。店主は笑顔だった。
晩酌のときにちょっといいものを用意して、ちょっといい皿に盛る。すると不思議なことに盛り方にも気を使ったりして、少し生活に彩りが加わる。独身男性、皿買うといいですよ。