大好きな台湾のポストロックバンド*1、Elephant Gymの新譜『Dreams』があまりにもよいのでこれを書いてる。来日したときには観に行ったし、レコードも買うくらいには好きなバンドである。
行ったわ、りんごも
初期作の方はいかにもバンド然とした曲がほとんどで、そういう荒々しさみたいなのが好きなんだけど、『Underwater』あたりからアルバム全体的にバンド演奏よりも1曲1曲だったりアルバムとしての完成度を上げる方向に寄って行ってると思う。しかし今回は今まで以上に好みの仕上がりになっていて、5/11リリース以来ほぼ毎日聴いてる。
Elephant Gymとは
日本オフィシャルサイトができてたのでそちらを参照されたし。
とにかく僕から言いたいのは
- ギターとベースが兄妹
- 兄はイケメン、妹はかわいい
- 兄(Tell Chang)は結構おとなしそうに見えるけどステージ上でギターを掻き鳴らしている姿が最高にかっこいい
- 妹(KT Chang)はちっちゃくてかわいいのにめちゃくちゃエグいベースを弾くので兄妹揃ってギャップ萌えも完備
- ドラムはお調子者キャラに見えて、めちゃくちゃバンド全体を見渡している一番しっかり者*2
- 僕はドラムの彼(Chia-Chin Tu)が一番好き
- 全員バカほど楽器が上手い
- ベースのタッピングが注目されがちだけどギターもドラムもクソほど上手い
こういう「マンガみたいにキャラ立ちしすぎてる3ピースバンド」だってことです。
『Dreams』全曲感想
先行してリリースされていたEP『CRACK OF DOWN』やシングルの収録もあるので比較的新曲が少ない方であるので、「知ってるわ」という人はご容赦ください。という意味も込めて、レビューではなく「感想」。
Anima
イントロはジャジーなギターと美しいスキャット、フルートと思われる管楽器やピアノなど一貫してジャズ要素の強い美しい曲から幕を開ける。『Underwater』以降ピアノ使用率高くなった気がするな。
Go Through The Night
EP『CRACK OF DOWN』からの再収録。ピアノ、ギター、ベースのアルペジオからドラムが入ったときに「Elephant Gymの曲だ......!」となれて最高。あまりにも美しい。ギターのリバースの音とかも結構入ってて、1曲に対する作り込みの熱意が伺える。中盤からテンポが上がっていき、ギターもベースもドラムも静かに勢いを増していく展開が最高。キックの音もずっしりしてるし、リバーブの効いた打楽器音がSFXとして気持ちいい。やっぱり3ピースバンドなんだよこの人達、という気持ちにさせてくれる。
日本のインストバンド・toeとストリーミングライブで国境を越えた遠隔対バンを実施したのをきっかけに、彼らの楽曲をサンプリングした"Go Through The Night"を制作し、収録。
全然知らなかったんだけどマジで言ってんのか?最高すぎるぞ、勘弁してください。
Shadow
冒頭のブレイクが完全に好き。小ネタ的に倍速の刻みがあったり、ボーカルが入ってきた時点で「あ、これライブで人気出るやつだ」と一瞬で脳が理解した。そして日本語が聞こえた瞬間に認識がバグってしまったが、歌ってるのは日本のバンドchilldspotのhiyuneさんという方。無学で申し訳ないのだがchilldspotというバンドは存じなかった。めちゃくちゃいい声してるので調べてみたらメンバー全員2002年生まれ。今年二十歳。まじかよ。才能の塊すぎるだろ。そして、chilldspotをちゃんと知っててオファーするElepahnt Gymすごすぎるだろ*3。 そしてLRの音の分け方が完全にエレクトロニカのそれなんだよな。それでいてちゃんといままで通りのよく動くベースと控えめだが確かに美しいギターは健在。しかし僕はこのバンドのドラムが好きなんだ。
Witches
テクニカルなギター/ベースとドラムから始まる緊張感のある曲。ドラムが巧すぎる。こちらの歌声はKT Changのようだ。相変わらず透明感があっていいボーカルだよ本当にもう。 この曲では久しぶりにTell Changがギターを掻き鳴らしていて「こういうのが聴きたかったんだよ!」と脳内で大声を出した。しかしプログレみたいな構成で本当に演奏技術の高さを感じる*4。
Dreamlike
EP『CRACK OF DOWN』からの再収録。最初から最後まで美しいピアノ曲。Tell Changにはピアノやシンセよりもガシャガシャギターをかき鳴らしてもらいたい派なのだが美しい曲なので許すしかない。
Wings
EP『CRACK OF DOWN』からの再収録?知らなかったんだけどKaohsiung City Symphony Orchestra(高雄市交響楽団)がクレジットされていた。『CRACK OF DOWN』のときにはクレジットがなかったので再録なのかもしれない。Sportifyの『X-Over Jazz』のプレイリストにも入ったこの曲はたしかにジャズを感じるブラスワークやストリングスが楽しい。しかしギター・ベース・ドラムの3ピースロックバンドとクラシックのオーケストラがコラボした曲がクロスオーバージャズと捉えられるの最高にロックだと思う。
Happy But Sad
アンビエンドサウンド上で優しく弾かれるギター。よいskitだと思います。
Shadow
こちらは前述のShadowの台湾語(?)バージョン。歌声はKT Changではなく9m88という女性シンガーの模様。こちらもいい声をしていて、エレクトロニカ感のあるこの曲によく合う処理がされている。
Deites' Party
シネマティックな打楽器から始まり、ブレイクが収まるとお得意のアルペジオ合戦が始まるボーカルもチョップ気味に処理されて入っており最高。そしてこちらも激しめのTell Changギターが聴けて嬉しい。 Chio Tian Folk Drums And Art Troupeは台湾の伝統的な太鼓演奏グループの模様。日本でいう鼓童みたいな人たちのようだ。Chia-Chin Tuが正面から真っ向勝負で叩くドラムが最高に素敵。
Dear Human(Japanese Ver.)
先行してEPなどでも入ってたDear Human(Japanese Ver.)が再収録。嬉しいね。来日ライブでも日本語で歌ってたりして人の心をつかむのが上手い。 しかし面白いのはやっぱり日本語話者ではないので音と言葉選びの感覚が確実に違うと思っていて、いい違和感を生んでいるように感じる。 そういえば昔ライブのときにKT Changが「日本語で歌います」って言っておもむろにカンペを取り出したの超かわいかったな。
Gaze At Blue(2022 Ver.)
2019年にシングルでリリースされた『Gaze At Blue』の再収録曲。相変わらず3人ともテクニカルである。
Fable
アンニュイなギターとしっとりしたドラムから始まり、お得意のベースが歌うように動き回る。アブストラクトヒップホップやアシッドジャズも感じる。ループの曲にセリフパートが入るが、僕は台湾語さっぱりわからんので「Alright」しか聞き取れません。
Dream Of You
Lin Sheng Xiangという台湾のフォークシンガーの方が歌う、曲名通りドリーミーな1曲。たしかにアルバムの最後はこういう曲だなって思う。シンセが非常に気持ちよくて、Lin Sheng Xiang氏の歌声にもよく合うし、KT Changはこんな曲でも縦横無尽にベースで駆け回っていて本当に素晴らしい。作曲能力も演奏能力も高すぎる。それをきちんと後ろから支えてるChia-Chin Tuのドラム、最高だよな。最後アコギと歌で締まるのが完璧。
とにかく僕から言いたいのは
聴いてください。