加味條さん、オモコロライターの中でも多才な人だな〜好きだな〜と思っていたら昨年急に小説で賞獲っててウケましたよね。みんなもそうに違いない。先日梨さんの『かわいそ笑』を読んだのでこの調子で『深淵のテレパス』もいっとくか、というノリで読みました。おもしろいです。めっちゃおもしろい。若干作品そのものじゃなくて外堀を埋める話にはなるんですけど、これ紙の書籍で買ったんですが帯コメント*1で芦花公園先生、澤村伊智先生が一筆寄せていて、それだけで僕の中では「絶対間違いないやつじゃん!」ってなってました。
「変な怪談を聞きに行きませんか?」
会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントでとある怪談を聞いた日を境に、高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。暗闇から響く湿り気のある異音、ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水──あの時聞いた“変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが……選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。
なんていうか物語の構成能力が高すぎる気がする。あまりにパズルのピースがきれいに噛み合っていくというか。もともとオモコロ記事のホラー系のやつとかでも「お話を作るのが上手いな」とは思ってたけど、文章のみでそれを成立させるのって相当すごいのでは?*2あらすじの通り、高山カレンが参加した怪談会をきっかけに起こる怪奇現象の話なんだけど、冒頭の怪談の異様さや出てくるキャラクターのリアリティがすごくて読んでてずっと飽きない。たしかに芦花公園先生/澤村伊智先生の作品とか好きだったらハマると思う。キャラ立ちという意味でも、エンタメとしてのホラーという意味でも。これいきなり送られてきたら編集部はビビっただろうな。
なんといっても芦屋晴子が最高のキャラ*3なんだけど、周りを固める越野/倉元/犬井、なんなら桐山楓も含めてキャラがよすぎる。もちろん主人公格である越野が最高なわけですが、個人的に「一番好きなキャラは?」と聞かれるとかなり迷うくらいに全員キャラが好き。言語化がなかなか難しいんだけど、全員ベクトルや目線の上下は違えど「一生懸命」なんですよね。僕は一生懸命な人間を見ると好きになってしまう傾向がある。そういう意味では肯定されるべきではない行為を行ったとはいえ高山カレンもそこまで嫌いではないです*4。あとさっき書いた「キャラクターのリアリティがすごい」ってのですが、高山カレンの事実を知ったあとの犬井ちゃんの「一生懸命助けようって気持ち、無くなっちゃったな」ってセリフがすごい好きです。裏返せばそれまで軽口叩いたり皮肉っぽいことやESP者ならではの不快感を示してたけど一生懸命助けようって思ってたってことじゃないですか。その対象が許されないことをしていたってことがわかって落胆するのってすげー「人間」だと思うんですよね。その上で晴子起因とはいえ「それでも助ける」って決断するのが僕はすごく好きです。すべての矛盾を包含して生きていくって感じがして。
あと重要なギミックとして「怪奇現象についてフラットに検証していく」という「あしや超常現象調査」のスタンスもよかったですね。真逆のアプローチとしては井上真偽先生の『その可能性はすでに考えた』の「すべてを奇跡の証明とする」なんだろうけど、いたずらに怪奇現象を持ち上げるYouTuberの逆/ゆえに出てきそうなコンセプトっぽさ*5というのが素敵です。だからこそ最後の倉元の現実的推理にも厚みが出てよい。ただの取ってつけた設定ではなく「可能性のひとつ」になるから。
いろいろ御託を並べましたが端的におもしろかったです。ベストホラー2024第一位というのもなるほどなという感じ。今年に続巻が出るとのことなので楽しみに待ってます。あとたまにでいいのでオモコロ記事もよろしくお願いしますね、上条先生(加味條さん)*6。
