kindleのアプリを開いたらいつライブラリに入れたのか覚えてないのに入ってたので読んだ。結論、めっちゃおもしろい本でした。ちなみにガストで読んでたのもこれです。
平成という時代があった。1989年1月8日に始まり2019年4月30日に終わった。およそ30年4か月に及ぶ時代が始まる日に生まれ、終わる日に死んだ一人の男がいた。名は青、母親は彼をブルーと呼んだ。平成15年12月、青梅で教員一家5人の刺殺事件が発生する。藤崎たち警察は、次女の篠原夏希(31)がほかの4人を惨殺した後、薬物摂取の心臓発作で亡くなったと推察した。夏希は高校時代から不登校となり、16年間引きこもっていたという。実はこの事件には重大な事実「凶器に夏希以外の指紋」があり、第三者がいたことがわかっている。事件はその後、夏希の驚愕の真実が明らかとなることで行き詰まっていく。平成31年4月、あと少しで平成が終わる時、多摩ニュータウン団地の空き室で血まみれの男女の死体が発見される。離婚して刑事にカムバックした奥貫綾乃が捜査に加わる。殺されていた二人には子供がいて、彼らはネットカフェ難民だったことがわかる――。平成元年に生まれた男。平成15年に迷宮入りした殺人事件。平成が終わる直前に起きた殺人事件。それらが平成という時代の中でつながっていく。平成が終わる今だからこそ、平成30年間の社会や文化の変化を描きながら、児童虐待、子どもの貧困、無戸籍児、モンスターマザーと、現代社会の問題に迫る、クライムノベルの決定版。
あらすじとしては以上の通り。このブルーを中心とした彼と彼の周りの人間の人生が描かれるんだけど、なかなか伏線が巧みに張られていてすごかった。正確には伏線というか「この人間のこの行動がここに繋がるんだ」というバタフライエフェクト感がすごい。あと冒頭からずっと「For Blue」から始まる「ブルーに向けた言葉」が幕間に挟まるんだけど、そのブルーに向けた言葉は誰のものなのかという謎も挟んでくる*1。
平成という時代が舞台になっているので、本当に頭から最後まで平成という時代を象徴する出来事を全部盛りで入れてくるのにちゃんと成立しているのがシンプルにすごい。他の人の感想を読むと「盛り込み過ぎて散漫になってる」みたいなことを感じる人もいるようだが、僕はそこまでとっ散らかってるような印象は受けなかった。個人的には切ない話だなと思う、ブルーのことを考えると。篠原夏希がドクズだと思ってるんだけど、ブルーにとってはかけがえない母親であることは変わらないし、だからこそ翼は最後にあの態度だったんだろうと思う。それでいうとこの小説もあまり言い過ぎるとネタバレになってしまうので好きポイントを列挙しづらくて困る。個人的に好きなキャラは樺島香織と藤崎司です。そして正田と亜子はクズなので嫌いです。あと亀崎ソーイングの社長、不幸になってください。そして一番好きなシーンは樺島とマルコスとブルーが三人でバルコニーで花火観ながら飯食うところです。せめてこういう一瞬くらいはブルーも幸せを感じてほしい。青梅事件の真相自体は最初からわかっているようなものだし、その後の殺人についても疑う余地ないでしょって感じだが、最終的には「なるほどなるほど」ってどんどん話がつながっていく感じがかなり気持ちよく、僕は大変楽しんで読ませていただきました。そして僕も平成を生きた身なので「あったわ~」ってなれてよかったです。それから藤崎司の最後の告白は「平成は終わって、今は令和である」という感じがしてよかった。いろいろな人間がいることが許される時代になったんだよな。
かなり気に入って一回遡って人のつながり確認したくらいなので作者の方の別作品も読んでみたい。kindle unlimitedにあった『コクーン』から読んでみようと思います。カルト宗教関連の話好きなので。
*1:が、本当に冒頭と幕間に挟まる「別視点」みたいな感じなので途中まで「ブルーに向けて誰かが語ってる」って気づかなかった