ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

恒川光太郎『南の子どもが夜いくところ』読んだ

なんというか、この人の作品を読むたび思うんだけど作家の頭の中ってどうなってるんだろうと不思議になる。もちろんモチーフにした島や文化はあるんだろうけど、なんでこんな存在しない設定を思いついて破綻なく描けるのか不思議でしょうがない。本当にすごい。そして毎回感じる仄暗い不気味さが素晴らしい。最初の一遍を読んだだけでかなり引き込まれてしまった。あとユナのイメージはペンギン・ハイウェイのお姉さんで脳内再生された。ユナすげーいいですね。全部が全部繋がっているけどそれぞれがそれぞれの人生で、歴史ってのはこういうもんなんだよなという気持ちになる。

話の流れとしては最初の一遍の主人公「タカシ」と旅先で出会ったフードワゴン(?)の不思議なお姉さん「ユナ」を中心に描かれる物語。タカシはわけあってユナに縁のある中南米と思われる異国に行って暮らしたりするんだけど、全く牧歌的な内容じゃなくて常に湿っぽい不穏さを感じる白昼夢みたいな話が続く。これだけ書くとなんだかホラーホラーしたような印象を受けるかもしれないが、どちらかというとファンタジーよりでホラー的な怖さではなく「正体のわからなさに感じる薄っすらとした恐怖」みたいな印象の方が強い。いうなればクトゥルフものに近いのかもしれない。「紫焰樹の島」が好きでした。しかし、繰り返しにはなるが存在しないであろう異国の地の生活/歴史/伝承をどうしてこうも鮮やかなディティールで描けるんだろうか。本当にすごい。