ときどきDJ

ときどきDJをやっているIT系の人の殴り書きです。

佐藤究『Ank: a mirroring ape』読んだ

kodanshabunko.com

特設ページとかあるのか。すげーな。

いや、これ2019年初版なんですけどマジでこんなすごい小説を3年も読んでなかったのかと自分に失望してしまった。素晴らしかった。ライトSF、パニックホラー、エンターテインメント、全部詰まってる。そんで全編通して「人とはなにか」に対する異常な興味がすごすぎ。

あらすじとしては、京都にあるチンパンジーの研究施設で不慮の事故が起きて京都で大殺人大会*1が起きちゃうさてどうしましょう、という話。これだけ読んでおもしろくなさそうと感じたらすみません、僕のせいです。まあ正味謎解きというわけではないのである程度詳細に書いてしまってもネタバレにはならんだろうけど、なんとなく話の中身をブログにつらつら書くのはあまり好きじゃないので書かない。この小説で巧みだなと思ったのが、時系列をバラして書かれているため「起きていること」「それが起きるに至った直接的な原因」「その奥に隠された『本当に求めているもの』」がどんどん組み上がっていく構造になってるところ。進めれば進めるほど解像度が上がっていく感覚があるというか、起きていることへの納得感が増していく。この体験はすごかった。また、パニックホラーはそれだけで成立するくらいに躍動感にあふれていて、やりすぎないスプラッター描写もあまりにちょうどいい。そして最後にパルクールが加わることで一気にエンターテインメントとして完成される。やばすぎ。時系列が分けられているからこそ静と動が感じられて、静のパートがあるからこそ動のパニックホラーパートがより強調されるし、動のパートがあるからこそ静のパートで物語の解像度の上がり方がブーストされる。あとこれ著者の人めちゃくちゃに勉強してんだろうなーってなってすごかった*2

あまりに面白かったため、同著者の『QJKJQ』も読んでる。最近、品田遊氏や佐藤究氏など大当たりの本が引けて嬉しい。

*1:勢いで書いたけど「大殺人大会(だいさつじんたいかい)」って響きいいな

*2:感想が極めて頭悪そうになってしまった